はばき元の地肌荒れについて




ハバキ元の地肌が大肌になったり荒れる刀は、多かれ少なかれよく見られます。総ての刀がそのようになるわけではありませんが、その傾向があることは否定できません。

刀鍛冶が梃(てこ)と呼ばれる鍛える際に使用する鉄棒の先で10数回折り返し鍛錬するときに、手前の部分の鍛えが粗くなるのかと思われます。

しかしハバキ元の鍛え肌が荒れるのは一般的によく見られますが、すべての刀匠において、そのようになるわけではないので、その刀匠個人の手癖であると考えられます。

手癖としてハバキ元の鍛え肌が荒れることは、作った刀匠自身が知悉している筈で、第三者が考えるには、そのような欠点が現れることを避けるために、火造りの段階で区を常より上に設定すればよいと考えられますが、改善する気は無かったようです。
なぜなら そのような欠点は新刀期の特定の刀匠にほぼ常に出る傾向があるからです。

虎徹の刀は、ハバキ元の肌が荒れることでよく知られており、刀剣の専門書にもその事実が指摘されています。透かしてみると大肌の中に異鉄が混じっており、俗に梃がねと呼ばれています。

しかし虎徹が常に荒れるわけではありません。興味ある事実として、虎徹の刀でハバキ元が荒れていない場合は、物打ちの地肌が大肌になることが多いものです。刀で中程の地肌に出る例は見たことがありません。しかし短刀では中程に異鉄が交じるものがあります。

ハバキ元の鍛え肌が荒れる例は、興里に関して指摘されることが多いのですが、先に述べたように無いこともあります。

むしろ金道、兼若のほうが、荒れている例が多いと言えます。

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