直刃の刀の鑑定


直刃の場合、にえ、匂い、葉、足の入り具合などで作者を特定出来る場合も多いが、刃文が単調であるために、手がかりが乏しい事も事実である。
他の顕著な特徴、たとえば鋩子が焼き詰めであるとか、鍛肌が純然たる柾目などの場合は特定は容易であるが、実際は多様である。そこで対象を絞り込むための一つの手法を、以下に提示することにする。

古刀の直刃は、大和系、山城系、美濃系、その他に分類できる。このうち美濃系は大和の傍流とみなされるから、大きく分類するとその殆どは大和系、山城系,及びそれらから派生した諸派の末流、それに山城風備前伝に包含されると言ってよい。
まず地鉄をみて、以下の二つに分類する。

      (1)柾目肌、或いは 柾流れが交じっている。
      (2)小板目、或いは 板目。




(1)
 柾目肌か、或いは柾流れが認められる場合 

この場合更に 
(イ)地鉄に白気が無い (ロ)地鉄に白気が有る に分類する。

   (イ)地鉄に白気が無い場合

   大和  千手院、保昌、当麻、手掻、尻掛、

   山城  来、 信国  


    (ロ)地鉄に白気が有る 

   
  宇多、  
  
    末手掻、  (簀戸国次を含む)
  
    三原正信
      
    二王
  
    高田長盛

    波平
        
     金剛兵衛系

     豊後行平
 



     美濃   兼長 (小板目もある)

           兼吉 (小板目柾交じり)

           兼定

          

    来系   延寿

         了戒
 
         藤島友重




(2)小板目、或いは 板目の場合。

この場合は、僅かの例外を除いて、ほぼ山城伝、山城風備前伝に収束される。

   粟田口
   
   雲類、 

    長光、 景光、 真長、 近景、


  
応永備前

   永享備前

   末備前

   青江

三原正家 (見たところでは、三原でも正信は柾交じりで、正家は板目肌であった。いずれも白気心がある。)

       
    若狭 冬廣



 
新刀

古刀と同様に地鉄をみて、以下の二つに分類する。

      (1)柾目肌、或いは 柾流れが交じっている。
      (2)小板目、或いは 板目。




 (1)柾目肌、或いは 柾流れが交じっている

  大和伝
               国包

               重国
 
  初代越後守包貞 (小板目つみ刃ぶち流れる)

        
  関系 
      三品一門、 国路
 
       政常

       二代輝広


上記と関係ないもの
               
興里 (直刃の時は柾流れの肌になる)

安定

堀川弘幸 (刃寄りが柾となる)             

   
(2)小板目、或いは 板目の場合。 

以下に示した国のうち、越前、肥前、薩摩は地斑が交じるので、ひとつの手がかりになる

江戸と大阪は交じらない。

江戸で地斑が交じるのは、興里であり、兼重は交じらない。



越前    康継、 貞国、 国清

肥前    忠吉一門

薩摩  波平安行(寛文、大肌が交じる)





江戸    和泉守兼重

大阪    助広、 助直
                   
       忠綱

       親国貞



新々刀
同様に地鉄をみて、以下の二つに分類する。

   (1)柾目肌、或いは 柾流れが交じっている。
   (2)小板目。



(1)柾目肌、或いは 柾流れが交じっている。

 
      徳勝

     十一代兼定

     清人

     左行秀


 (2)小板目。


         徳隣

        正秀

        宗次

        正繁

        後代忠吉


  
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