登録審査


発見届の手続きを済ませて待っていると、教育委員会から審査日時、場所、持参するものを記した封書が届きます。
登録審査は東京都のように毎月行われるところもありますが、県によってちがいます。千葉県の場合は通常3ヶ月に一度の頻度で行われます。
登録証を交付するための鑑定基準は、銃砲刀剣類登録規則 第4条2項1号~4号に記載されています。

 
銃砲刀剣類登録規則

第四条

2項 刀剣類の鑑定は、日本刀であつて、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行なうものとする。

一 姿、鍛え、刃文、彫り物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの

二 銘文が資料として価値のあるもの

三 ゆい緒、伝来が史料的価値のあるもの

四 前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの



最高裁判所 平成2年2月1日判決 によって要件を簡約すれば 「日本刀であって、美術品として文化財的価値を有するものに限る・・・・」 (最高裁民事判例集44巻2号369頁)ということになります。

いっぽう登録の対象とならない刀剣類は、昭和33年3月28日に文化財保護委員会事務局長から、各都道府県教育委員会教育長にあてた通知(文委美第8号通知 Ⅱ3(2) (イ)(ロ)(ハ))に記載されており、以下にその原文を転載しておきます。

(イ)全体的にはなはだしいさび、傷、つかれ等のあるものまたは製作が著しく劣っているもの
 
(ロ)昭和刀、満鉄刀、造兵刀等の名称で呼ばれる素延べ刀、半鍛錬刀、特殊鋼刀等であって、日本刀に類似する刀剣類で 製作工程が日本刀としての工程を経ていないもの
 
(ハ)外国製刀剣類 




発見された刀剣の錆がひどく地刃の鑑定が不能の場合、「窓明け」と称する部分研ぎをして再度審査を受けるように言われる事があります。そのような事が無いように、錆がひどい場合はあらかじめ専門の日本刀研師に窓明け研ぎを依頼して、しかるのち審査会場へ赴くのが2度手間にならず賢明です。

登録証の交付手数料は、2022年現在 1通につき税込み 6300円です。

時折 登録証を交付されない刀剣があります。それはさきほど申し上げたように古来からの日本刀鍛法で鍛えていない軍刀の類です。

誤解のないよう申し添えると、軍刀拵に納まっている刀は必ずしも鍛えられていない粗悪な刀ばかりではありません。戦争中に作られた刀でも本鍛えで作られている例も多く、江戸時代以前の刀が軍刀拵に納まっている例も珍しくありません。

登録証を交付されなかった刀剣は没収処分となる例が多いようです。しかし美術的価値の無い軍刀でも、父や祖父のかけがえの無い遺品という場合があります。そのような場合でも没収とは誠に気の毒と言わざるをえません。

実は、一般の民間人が刀剣を合法的に所持するには、以下の2つの方法があります。

1 既に第一章で述べたように、登録証を交付されている刀剣を所持する場合(銃刀法第3条6項)。

2 銃と同じように、特定の個人が特定の刀を所持する事についての許可を、公安委員会から得た場合(銃刀法第3条3項)。 

どのような場合に許可の申請をなし得るかは、銃刀法第4条1項六号~十号に記載されています。


参考条文 銃刀法 第4条1項 六~十号

六  狩猟、有害鳥獣駆除、と殺、漁業又は建設業の用途に供するため必要な刀剣類を所持しようとする者

七  祭礼等の年中行事に用いる刀剣類その他の刀剣類で所持することが一般の風俗慣習上やむを得ないと認められるも のを所持しようとする者

八  演劇、舞踊その他の芸能の公演で銃砲(けん銃等を除く。以下この項において同じ。)又は刀剣類を所持することがやむを得ないと認められるものの用途に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者

九  博覧会その他これに類する催しにおいて展示の用途に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者

十  博物館その他これに類する施設において展示物として公衆の観覧に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者


しかし「父や祖父のかけがえの無い遺品」という事実は、上に示した銃刀法第4条1項六号~十号に列挙されている要件に該当しませんが、公安委員会に相談してみたらいかがでしょうか。事実関係を確認した上で許可することがあるようです。

許可になった場合には許可証が交付されます(銃刀法第7条)。

刀剣の所持許可証については 更新手続きはありませんが、毎年所轄の警察に赴き確認手続きをする義務があると聞いております。所持許可証のついている刀剣は公安委員会の許可なしに譲渡売買はできません。

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